『星の王子さま』とキリスト教(1)

2010年3月9日

星の王子さま『星の王子さま』といえば、誰でも知っているサン・テグジュペリ(Antoine de Saint-Exupéry, 1900-1944) の名作ですね。

日本では、特に人気が高いのか、箱根にミュージアムまでありますよね。でも、このお話とキリスト教の関係については、あまり語られることがないようです。ここでは、聖書に次ぐロングセラーと呼ばれるこの名作童話とほかならぬ聖書の関係をさぐってみましょう。。。!

006『星の王子さま』は、サン・テグジュペリによって書かれた実は唯一の童話です。それも、1943年第二次世界大戦中に亡命していたアメリカで出版された本でした。それまでのサン・テグジュペリは、飛行士としての経験をもとに、ドキュメンタリー風の作品や大人向けの小説、それに人生論のような本を主に書いていました。ニューヨークのレストランで打ち合わせをしていた時、紙ナプキンに少年の絵をいたずら書きをしていたのを出版社の人が見つけ、彼にクリスマス用の童話を頼んだのが、このお話の生まれるきっかけだったのです。

この本が出版された翌年1944年に、戦争に従軍していたサン・テグジュペリは、偵察飛行のまま消息を絶ち、再び生きて帰ってくることはありませんでした。ドイツ軍に撃沈されて地中海に沈んだものと思われています。ですからこの童話は、実はもう死を覚悟していた作家の「遺書」とも言える作品なのです。

1943年の出版から世界160カ国語に翻訳され、累計発行部数は、8000部とも言われます。日本でもも、岩波書店から1953年に発行されて以来、600万部を売り上げた児童文学としては異例の超ロング・ベストセラーです。

でも。。。

この「児童文学」を読んで、「なんだか良くわからない。。。。」と思う人の方が実は多いのです。みんな恥ずかしいので、口に出して言わないだけなんですけどね!

なぜ、わからないのか? そこに、この「童話」が「キリスト教」的な背景のもとに描かれていて、いくつかの鍵があると、よくわかってくるという秘密があります。

それでは、これからご一緒に、星の王子さまに案内してもらって、その秘密を探る旅を始めましょう。なぜって、私たちはみんな大人になってしまって、大切なことが「見えなく」なってしまっているかもしれませんからね。(続く)

文:片山はるひ