2014年9月28日(日)東京教区 関町教会において
ノートルダム・ド・ヴィ会員の 片山はるひ が
リジューの聖テレーズについての講話を行いました。
その講話を数回に分けてご紹介して行きます。
今回はその3回目です。
『闇』を貫く光 幼きイエスの聖テレジアの霊性
片山はるひ(ノートルダム・ド・ヴィ会員)
5人の姉妹の中でテレーズはいちばん下でしたが、レオニーというお姉さんがいました。マルタン家の姉妹は皆とてもチャーミングで良い感じだったのですが、レオニーは醜いあひるの子だったのです。性格も少し強情でおちこぼれっ子でした。どうしてこの人たちからこんな子が生まれるのか、と言われるような子だったのです。けれどそのレオニーが実はテレーズの小さい道を本当に最後まで歩んだのではないか。カルメル会以外でシスターになった方で、今本にもなっています。もしよろしかったらぜひお読みください。レオニーは実はとても魅力的で非常に人気があるのです。
これはマルタン家が住んでいたビュイソンネと呼ばれる家です。素敵なおうちです。すごく大きいとはいえませんが、当時の中産階級ががんばって建てたという感じのおうちですが、このリジューに行ったときにはもうお母さんは亡くなっていて、お父さんと子どもたちで住んでいました。
7.苦しみ
4歳のときにお母さんを亡くしたのち、ポリーヌという2番目のお姉さんがカルメル会に入ってしまいます。ポリーヌはテレーズがいちばん愛していたお姉さんで、第2のお母さんといえる人でした。お母さんが亡くなったあと頼りにしていたお姉さんだったのです。確かにこのポリーヌという人は、カルメル会に入って後に院長になるというすばらしい人でした。仕方がないので、いちばん上のお姉さんであるマリーがお母さん代わりになりますが、そのマリーもカルメル会に入ってしまいます。
テレーズからすれば不幸なことで、そのときに“糸”は切れてしまいます。今で言う心身症になるのです。重い神経症で、一種の錯乱状態です。叫ぶ、わけのわからないことを言う、熱も出る、体と心がめちゃくちゃになって、自分の愛情のフラストレーションがどうにもならない、そういう子どもになってしまいました。
もうテレーズはこのまま死ぬのではないかと、お姉さんたちはベッドサイドで一生懸命祈ります。
そのときに祈ったマリア様がこれです。「ほほえみのマリア像」といって、本物はカルメル会にあってレプリカがビュイソンネの家の中にあります。この聖母像の前で祈っていたのです。テレーズはもうどうしようもない状態だったのですが、そのときにこの聖母がほほえんだ、そしてそのほほえみによって癒されたのです。確かにそれからテレーズは治ったのです。ひとつの小さな祈りによる奇跡です。
ただ、そのあと、この奇跡によってハッピーエンドになりそうなところが、そうはなりませんでした。これによって、そのことをあれこれといろいろな人に訊かれ、テレーズはものすごく過敏で小心な少女になってしまいます。この奇跡のあとですごく苦しむのです。
このテレーズの写真をごらんください。これが当時のテレーズですが、可愛いのですが、少し線の細い神経質な感じがおわかりでしょうか。
テレーズは、学校で落ちこぼれ、今でいう不登校でした。いじめられて学校に行けなくなります。すぐ上のセリーヌというお姉さんは男勝りの人でしたから、セリーヌがかばってくれていたときはよかったのですが、彼女が卒業してしまうとひとりになり、いじめられて不登校になります。そこでお父さんが家庭教師をつけてどうにかやっていました。
この頃のテレーズは、綴りも間違いだらけで頭も悪かったのです。心があまりにも苦しかったので頭の成長もできなかったのです。泣き虫で、しかも泣いたことが恥ずかしくてまた泣いてしまいます。当時の学校の寄宿舎のシスターが、テレーズが聖人になったときにインタビューにこたえて「このクラスの中で誰か聖人になると言われたら、この子だけは違うでしょうという子です」と言ったのだそうです。そういう子だったのです。
つづく