教区の神学校を出て、男子カルメル会に入会

009今や、アンリの特別の召命が明らかになりました。〈教区の神学校を出て、男子カルメル会に入会する〉
しかし、ことで、大変な反対が起こります。

教区から優秀な神学生が出て行くのを望まぬ司教様は、その望みを一度で突っぱねます。

それも、ある意味、当然なのは、当時男子のカルメル会はほとんどその存在が知られていない会だったからです。

人々の頭には、「カルメル会」とは禁域でひっそり祈りの生活をする女子カルメルのイメージでした。
一番激しい反対は、最愛のお母さんからのものでした。

全てをこの息子にかけ、息子のために生きていたような母にとって、このようなアンリの突然の召命は、裏切りとさえ思えるほどでした。

「僕は、母を熱烈に愛していた。だから母から離れることがどれほど、母を苦しめているかを知った時、僕自身もうこれ以上苦しむことはできないと思えるほど苦しんだ。」

そうした中、アンリは、1922年2月4日、教区司祭として叙階されます。

010「わたしは司祭だ。永遠に司祭だ。この一言で十分な黙想となる。今日はこの言葉をあきずに繰り返していたい。ほとんど信じられないくらいだ。
しかし、繰り返すたびに、より深い感慨と新たな幸福に満たされる。わたしは司祭だ。長年心に温めていたこの夢がとうとう現実のものとなった・・・・
あなたが望まれるすべてのことに、わたし自身を捧げよう。それが平和、喜び、闇、苦しみであろうとも。
あなたが神のみ旨に忠実であったように、すべての神の望みに素直に従う柔軟さを、主よ、わたしに教えてください。」
――叙階の日の日記より