ところが、1914年から始まった、第一次世界大戦により、神学校の生活は中断され、アンリは、軍隊に招集されます。
この戦争は、塹壕での肉弾戦の時代で、多くの死傷者を出した悲惨きわまりない戦争でした。
この戦場での試練、兵士達との生活でアンリは人間についての多くの経験を徔ました。
そして、「神の摂理にまったく身を委ねる」ことを学び、徹底的に司祭になる決心を固めて神学校へと戻りました。
アンリが、探しもとめてきたのは、神の望まれることを完全に果たしたい、それのみでした。
そして一大転機が訪れます。
ある時、なにげなく手にとって読み始めた、十字架の聖ヨハネの伝記にアンリは、稲妻に打たれたような衝撃を受けます。
「神は、自分をカルメル会に呼んでおられる!」
あまりにも、とうとつな、しかし疑うことのできない神からの呼びかけでした。
後に、マリー=ユジェーヌ神父は、
「魂の深みで、私はいつも十字架の聖ヨハネと共に生きていた」
と言うようになります。
現代の十字架の聖ヨハネとまで呼ばれるようになった、マリー=ユジェーヌ神父と十字架の聖ヨハネとのこれが運命的な出会いでした。